ずっと捜していた女性<ひと>の居場所を記したメモを片手に
ビッテンフェルトは走る
此処だ!
この家にアマンダが住んでいるのか?
あの夜から一年以上も経っている
俺だけが、いつまでもお前のことが忘れられなくて
お前の方は、一晩だけ過ごした俺のことなど忘れているかも・・・
もしかしたら
他の奴<おとこ>と住んでいるのかも知れない・・・
あぁ、フェルナーにちゃんと聞いてから来るんだった
勢いで此処まで来たけど・・・
う~ん どうするべきか?
ビッテンフェルトは、ドアの前で悩んでしまった・・・
『怖いのかね?』
感情も生気もない声が聞こえる
聞き覚えのある嫌みな声の持ち主に
「お前、まだヴァルハラの門をくぐれないのか?」と
言い返してやる
覚悟を決めて呼び鈴を押す
アマンダの声が聞こえた
「お、俺だ!ビ、ビッテンフェルトだ」
心臓の音が聞こえるぐらい、緊張しているのが自分でも判る
少し、間があく
駄目か・・・と思った瞬間、ドアが開いた
アマンダとそして抱いている赤ん坊
ずっと想っていた蒼色の瞳と、見覚えのある薄茶色の瞳
長くなったクリーム色の髪と、さらさらしたオレンジ色の髪
固まって、頭の中が真っ白になった俺の耳に
赤ん坊の鈴の鳴る様な可愛らしい笑い声が聞こえる
何か言わなきゃ、何か・・・
あぁ、言葉が出てこない
赤ん坊を抱いているアマンダを
そのまま、抱きしめる
「捕まえた」
一言だけ言葉が出た・・・
<END>
~あとがき~
小春日和の再会をビッテンフェルト視点で書いて見ました。
玄関先で躊躇したビッテンフェルトの背中を、後押ししたのは<彷徨うオぺさん>です(笑)
最初、娘の存在に驚いたビッテンフェルトですが、その後、甘~い父親になってしまいます。