ヨーロッパの国々U 東ドイツの事情(2)
ライプツィヒ旧市庁舎 ライプツィヒ新市庁舎
 わずか1ケ月の間に東ドイツの事情も大きく変わりました。東西冷戦の象徴であったベルリンの壁が崩壊し、東ドイツの人々が、西ドイツを自由に訪問できるようになりました。テレビなどは早速、東ドイツの何人かを追跡して、彼らが西ベルリンでもらった100Dマルクで何を購入するかを調べていましたが、バナナとかアイスクリームが圧倒的に多かったことに驚いていたようです(ドイツの通貨の単位は、両ドイツ共にマルクなので、西はDM、東はMで表し区別をしています)
 東で両替 1DM 1M 75円 1989年7月現在の両替表
 西で両替 1DM 12〜19M
 話は変わって、外国人が東ドイツを旅行する際には、外国人専用のホテルを予約しなければなりませんが、その支払いはすべてDMか、あるいはそれに換算したドル又は円で支払わされます。大体一泊が、120〜200DMはするのですが、これは東ドイツとしてはべらぼうに高い金額なのです。ちなみに1Mあれば、市電の6枚綴りの回数券が買えますし、レストランでは生ビールジョッキ一杯を1.3Mで飲むことができます。私はある日、理髪店で調髪をしてもらいましたが、洗髪なしで1.5M出したらお釣りがきました。さて、この外国人専用のホテルは必ずといって良いほどインター・ショップ(外貨専門店)をもっています。そこは東ドイツ人も利用できますが、東のマルクは使えません。 しかしそこには、各種のアイスクリームを始め、いろいろな果物や電化製品など、一般の店では売っていない外国商品があるのです。カール・マルクス大学に留学している日本女性がこんな事を話してました。「外貨をもってインターショップに入り、思い切り外国の品物を買うことが、この国の人々のささやかな夢なんですよ」
 先程の話に戻りますが、何故バナナやアイスクリームを求める人ががそれほど多かったのか、お分かり頂けたと思います。私は滞在期間中、ホテル住まいの日を除けば、直径数センチの青くて渋いりんご、西瓜、さくらんぼうにぶどうを少々口にできただけです。確かに東でもアイスクリームは売っています。しかし、西側のテレビのコマーシャルに出てくるような豊富な種類は望むべくもありません。しかも店の数が少なく、ある時間帯しか売り出さないのですごい行列になるのです。
 やたら東ドイツのマイナス面を強調してしまいましたが、前に挙げたアルコール類や肉などの食料品、交通費書籍、楽譜とレコード、演奏会や美術館、博物館の入場料は驚くほど安く、ここに国が何を重要視するのかが端的に示されており、これが正に社会主義体制なのです。
   (以下次号)

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