17インチ仕様  Fホイールの換装

 17インチ化のために準備したGSF1200のフロントホイール。中古ホイールであるが、ホイールに付属してきたタイヤはほとんど減っていない新品に近い状態だった。

(使用パーツ)
・スズキ純正/54111-17E11-35W フロント・ホイール3.50-17(GSF1200用)
 17インチ仕様では、18インチ仕様で使っていたヨシムラSHOWA−41Φ(フォーク長801.5ミリ)をそのまま使う。ヨシムラでも17インチ仕様のNK-1レーサーでこのフォークを使っており、インナーチューブの厚みを考えると、43Φフォークに匹敵する剛性が得られると考えられる。
 ところが、ヨシムラのフォークにGSFのホイールを取り付けるにあたって大きな問題が発生した。ヨシムラのフォークはあくまでもレース用であるため、フォークのボトムケースの形状が左右とも同じ形状となっている。つまり、左側のボトムケースには、市販車のようなメーターギアボックスの「逃げ」がないため、幅のあるGSFのメーターギアボックスを取り付けることができないのだ。
 18インチ仕様の製作にあたってヨシムラSHOWA−41Φフォークに合わせてワンオフ製作してもらった17Φアクスルシャフト。通常のスズキ車とは逆で、左側のフォークからアクスルシャフトを挿入して、メーターギアボックスの方から締め込むタイプである。アクスルシャフトのサイズは、画像左側から45.0ミリ(20Φ)+170.0ミリ(17Φ)+25.0ミリ(M17P1.5ミリのネジ)の全長計240.0ミリ。この18インチ仕様で使っていたワンオフ品を、加工することなく、そのまま17インチ仕様に使う。
 '86GSX-750RGの上下ステム(フォークピッチ200ミリ)に取り付けたフロントフォーク。左右ボトムケース間の距離は161ミリ。
 この161ミリの間隔に左からメーターギアボックス(29.5ミリ)、左ホイールベアリング(14.0ミリ)、ディスタンスカラー(74.0ミリ)、右ホイールベアリング(14.0ミリ)、センター出しスペーサー(29.5ミリ)を順に取り付けるとホイールのセンターを出せる計算になる。
 GSF1200のメーターギアボックス。幅(厚さ)は34.0ミリで、内径は20Φ。ヨシムラSHOWA−41Φフォークに17インチのホイールを取り付けるためには、このメーターギアボックスのフォーク側を4.5ミリ削って、幅29.5ミリにするとともに、スペーサーを厚入して、ギアボックスの内径を17Φにする必要がある。
 そのまま使うことができる丁度よいサイズのギアボックスが純正部品にあるはずもなく、すでに17インチを実現しているTAKIさんやyuuさんにアドバイスしてもらいながら、専門業者に加工を依頼した。

(使用パーツ)
・スズキ純正/54600-17C01 ボックスassy、スピードメーターギア(GSF1200用)
 加工を終えたギアボックス。画像からわかるように仕上がりは完璧。今回の加工では、フォーク側を4.5ミリ削って幅29.5ミリにしてもらったが、メーターワイヤーの取り出し口の突起部もギア内部が露出せずに済んだ。また、アクスルシャフト径の変更に合わせるために依頼したギアボックスの内径を20Φから17Φにするためのスペーサーも指定どおりに厚入されている。厚入するスペーサーはギアボックスの幅よりも3.5ミリ短い26.0ミリの長さで製作してもらい、アクスルシャフトの形状に合わせて、ギアボックス内部に段差ができるようにした。したがって、左側のフロントフォークからアクスルシャフトを締め込むと、アクスルシャフトの太い部分(20Φ)にギアボックスに厚入されたスペーサー(17Φ)が押されてベアリングを押し付けるという仕組みである。これは18インチ仕様を製作したときのノウハウを生かしたもの。

(使用パーツ)
・ワンオフ/スペーサー(厚入用) 内径17.0ミリ×外径20.0ミリ×長さ26.0ミリ、規格−精密級、素材−スチール、公差−内径 +100分台、外径 +100分台(圧入)、長さ -100分台
 GSFホイールに取り付けられているベアリングは20Φのアクスルシャフト径に合わせたNSK製の「6204DU」(内径20ミリ、外径47ミリ、幅14ミリ)の接触型片面シールドタイプである。GSFホイールを太さ17Φのアクスルシャフトに組み合わせるためには、このベアリングを内径17ミリのものに交換しなくてはならない。つまり、外径と幅が同じで、内径のみ17ミリになるベアリングに交換すれば、17ΦのアクスルシャフトとGSFのホイールを組み合わせることができる。
 交換にあたっては、近所の機械部品店が必要なサイズのベアリングを規格品の中から選んでくれた。

(使用パーツ)
・NTN/6303LLUC3 接触型両面シールドタイプベアリング(内径17ミリ、外径47ミリ、幅14ミリ、隙間記号C3)×2個

*隙間記号C3は、バイクのホイールに対応する物で、隙間が小さい普通のベアリングを使うと、焼き付いてホイールの回転が渋くなる恐れがあるので注意!
 アクスルシャフト径の変更(20Φ→17Φ)にともない、GSFホイールの中に入れる左右ベアリング間のディスタンスカラーも専門業者にワンオフ製作してもらった。

(使用パーツ)
・ワンオフ/ディスタンスカラー 内径17.0ミリ×外径25.0ミリ×長さ74.0ミリ、規格−並級、素材−スチール、公差−内径+0.1〜+0.3mm、外径0〜−0.1mm、長さ0〜−0.1mm。
 右ホイールベアリングと右フォークの間に入るホイールのセンター出し用スペーサー。これも専門業者にワンオフ製作してもらった。本当はステンレスで作ってもらいたかったが、予算の関係からジュラルミン製で妥協することとした。スペーサーの長さを、加工したメーターギアボックスの幅と同じ29.5ミリにすることによって、左右フォーク間の中心にGSFホイールのセンターを収める設計だ。

(使用パーツ)
・ワンオフ/スペーサー(ホイールセンター出し用) 内径17.0ミリ×外径25.0ミリ×長さ24.5ミリ、規格−並級、素材−ジュラルミン2017s、公差−内径+0.1〜+0.3mm、外径0〜−0.1mm、長さ0〜−0.1mm。
 車輌の左側からアクスルシャフトに通す順番に上記のパーツを並べてみた。次の@〜D順に組み付けると、これらのパーツがフォークの左右ボトムケース間(161.0ミリ)にピッタリ収まる計算である。

@メーターギアボックス   幅29.5ミリ
A左ホイールベアリング  幅14.0ミリ
Bディスタンスカラー    幅74.0ミリ
C右ホイールベアリング  幅14.0ミリ
Dセンター出しスペーサー 幅29.5ミリ

※@+A+B+C+D=161.0ミリ
パーツが一通り揃ったところでフロントホイールの換装を行った。まずはGSFホイールに入っている元の内径20ミリのベアリングの打ち抜きから。作業にあたって使用した工具は、以前からベアリング交換時に使っているスズキ純正工具のベアリングリムーバ(品番9941-50111)。
 新しい内径17ミリのベアリングの打ち込みは、ベアリングの外輪に合うサイズのボックスレンチのコマをベアリングに当てて叩き込むという原始的な方法で行った。まずは左側のベアリングをハンマーで慎重に打ち込んだ。
 打ち込みが終わった左側のベアリング。ホイール左側のベアリングはホイールの奧に当たるまで打ち込むのだが、叩いていくと奧に当たった時点で打ち込み時の音が変わるので分かりやすい。ディスタンスカラーをホイールに入れてから、今度は右側のベアリングを打ち込むのだが、ベアリングの内輪がディスタンスカラーに軽く触れる程度で打ち込みを終える。
 打ち込み過ぎるとベアリングに余計な力が加わり、ベアリングが走行中に焼き付いたり、ベアリングの寿命が極端に短くなるなどのトラブルが発生する。ホイールベアリングの交換時は充分な注意が必要だ。
 
ベアリングの交換が終わり、あとは他のパーツとともに、GSFホイールにアクスルシャフトを通してフロントフォークにセットアップするのみ。
 アクスルシャフトを通し、セットアップが完了したフロントホイール。計算通り、ホイールのセンターをバッチリ出すことに成功した。
(TAKIさん、yuuさん、アドバイスどうもありがとうございました!
 ホイールの右側はこんな感じ。ホイールの位置はあくまでも右側のベアリングと右フォークの間に入るこのセンター出しスペーサーの長さで決定される。ヨシムラのフォークのボトムケースは左右対称の形状であったため、パーツを仮組みした上での検証をすることなく、計算の上からスペーサーの長さを割り出し、ホイールのセンターを出すことができた。
 加工したメーターギアボックスもホイール左側にうまく収まっている。ブレーキキャリパーを付けない状態で手で回したホイールの回転はいたってスムーズで、しばらくの間、ホイールがそのまま回り続けていた。今回は機械部品店の薦めで接触型の両面シールタイプのベアリングを取り付けたが、ロスになるほどの走行抵抗はないと思う。
 今回17インチのホイールとともに取り付けたGSFのメーターギアボックスには、先端形状の違いから、カタナのメーターケーブルを使うことができない。そのために、メーターケーブルの交換が必要になったが、他の車種のメーターケーブルをいろいろと試してみた結果、GSX−R1100WPのメーターケーブルに、長さ13センチの延長ケーブルをつないだ長さが丁度よかった。
 参考までに、試してみたメーターケーブルの長さは、GSF1200S=GSX250S>GSX−R1100WP>GSX−R750J/K/Lの順だった。

(使用パーツ)
・スズキ純正/34910-24D10 ケーブルAssy、スピードメーターケーブル(GSX-R1100WP用)
・POSH/000110 スピードメーターケーブルジョイント(13センチ)
 上記のスピードメーターケーブルジョイントを使って、メーターケーブルを延長した。
 メーターケーブル延長後のケーブルの取り回し。走行時にメーターケーブルがブレーキキャリパーに接触したり、フォークが伸びきったときにケーブルが引っ張られる心配はなくなった。
 スイングアームやリアホイール、リアショック、ブレーキ等の17インチ化作業を終えて完成した前後17インチ仕様のカタナ。