1. Troy陥落日を推定できる史料中の記述
(1) Peteusの子Menestheusの治世中、Troyが占領された。[Euseb.Chron.185]
(2) Theseusの子Demophonの治世中、陥落後のTroyからTydeusの子Diomedes率いる遠征隊が帰還した。[Paus.1.28.9]
(3) Troyの占領は、Theseusの子Demophonの治世の最初の年のThargelion月の12日目であった。[Cleme.Str.1.21]
(4) Thargelion月の24日目にTroyが陥落した。[FGrH.5.7, Plut.Camill.19]
以上の記述から、Troy陥落は、Peteusの子Menestheusの治世最後の年で、Theseusの子DemophonがAthens王に即位した年であると推定される。
2. Athens王Demophonの即位年
BC1世紀の年代記作者Castor of Rhodesは、歴代のAthens王の在位年数を伝えており、第29代Athens王Aeschylusの在位12年目に、Coroebusが徒競争で優勝した最初のOlympiadが開催されたと記している。[Euseb.Chron.187]
ErisのCoroebusが徒競争で優勝した最初のOlympiadは、BC776年であることが分かっており、Aeschylusの即位年は、BC787年である。[Paus.5.8.6]
Aeschylusから、在位年数に合せて逆算すると、第12代Athens王Demophonの即位年は、BC1186年となる。
3. Troy陥落日
Troyが陥落した「月」については、Thargelion月で、各史料とも一致しているが、「日」については一致していない。
Attica地方の著作家は、Troyが陥落した日は「満月であった」と記し、the Little Iliadの作者は、「月がはっきりと輝いていた」と伝えている。[Cleme.Str.1.21]
NASAなどのWebサイトに掲載されている歴史的日食の一覧によれば、BC1178年4月16日に日食があったことが判明していることから、その日は新月であったことが分かる。
[Odyssey Eclipse - https://eclipse.gsfc.nasa.gov/SEhistory/SEhistory.html]
この日から遡って、現在の暦で、5月から6月とされるThargelion月の満月を月の満ち欠けの周期を、29.53日として計算すると、つぎのようになる。
BC1178.4.16(新月)から15日目は、BC1178.5.1(満月)
閏年(BC1180, 1184) BC1178.5.1 - BC1186.6.1(8 * 365 + 2 - 31 = 2,891 days)
2,891 / 29.53 = 97.90044 ----- 29.53 * 98 = 2893.94 = 2894 = BC1186.5.29
以上のことから、Troy陥落は、BC1186年5月29日と推定される。
おわり
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