1 はじめに
BC1580年、Hellenの父Deucalionの祖父は、Hyantesなどによる圧迫を受けて、Boeotia地方から北へ移動した。Deucalionは、Thessaly地方北部を流れるPeneius川に南から流れ込むEnipeus川の上流に、妻の名に因んでPyrrha (後のMelitaea)の町を創建した。[1]
Deucalionには、2人の息子たち、AmphictyonとHellenがいた。[2]
HellenはPhthiotis地方を治め、その地の人々はHellenesまたはHellasと呼ばれた。[3]
Hellenには、3人の息子たち、Aeolus、Xuthus、Dorusがいた。[4]
Hellenの後裔は勢力を伸ばし、AeolusはAeolis、DorusはDoriansの始祖になった。Xuthusには、2人の息子たち、AchaeusとIonがいた。AchaeusはAchaeansの始祖になり、IonはIoniansの始祖になった。[5]
Hellenが死ぬと、AeolusはDorusと一緒になって、Xuthusを追放した。[6]
BC1470年、Xuthusは叔父Amphictyonがかつて王として統治したAthensの町へ行き、第4代Athens王Erichthoniusの娘Creusaと結婚した。Xuthusは、Attica地方の北東部に周辺から住人を集めて、Oenoe、Marathon、Probalinthus、Tricorynthusという4つの町を建設した。[7]
BC1442年、Erichthoniusが死ぬと、XuthusはPeloponnesus半島北東部のAegialus (後のAchaiaの一部)地方と呼ばれる海岸地方へ移住し、その地で没した。[8]
2 Hellenの子Xuthus
BC1442年、XuthusがAttica地方からPeloponnesus北東部へ移住した時、そこには、2つの町があった。
2.1 Aegialea (後のSicyon)
Aegialeaの町は、BC1750年、Inachusの子Aezeius (or Aegialeus)によって創建された。[9]
2.2 Hyperesia (後のAegeira)
Aezeiusの子Lycaonの子Hyperetusは、Aegialeaの町から西北西へ約40kmの所へ移住して、Hyperesiaの町を創建した。[10]
Hyperesiaの町の創建は、BC1680年頃と推定される。
Hyperesiaの町は、後に、Aegeiraと呼ばれるようになった。[11]
2.3 Xuthusの定住地
Xuthusが定住したAegialusは地方名であり、正確な場所は不明である。
しかし、Xuthusの定住地は、当時存在していた2つの町、Aegialeaの町とHyperesiaの町の間であったと思われる。
そこには、Xuthusが定住してから約160年後、第6代Athens王Erechtheusの娘の娘Gonussaの名前に因んだ町が創建された。[12]
Gonussaの時代、Xuthusと共にAttica地方から移住した人々の子孫が、その地で暮らしていたものと思われる。
3 始祖Ion
Ionは、Hellenの子Xuthusと第4代Athens王Erichthoniusの娘Creusaの息子として生まれた。[13]
BC1442年、Ionは、父Xuthusと共に、Attica地方から当時Aegialusと呼ばれていたPeloponnesus半島北部の沿海地方へ移住した。[14]
BC1440年、Ionは、Aegialiansの王Selinusの娘Heliceと結婚した。[15]
Selinusは、Hyperesiaの町の創建者Hyperetusの後裔で、Hyperesiaの町の王であったと思われる。したがって、Hyperesiaの町の住人は、Aegialea (後のSicyon)の町と同じく、Aegialiansと呼ばれていた。[16]
Ionは、Selinusの跡を継いで、Hyperesiaの町に住み、Aegialiansの王になった。[17]
BC1430年、Ionは、Hyperesiaの町から西北西へ約21kmの所にHeliceの町を創建した。[18]
Xuthusの子Ionが治める人々は、Ioniansと呼ばれるようになった。[19]
3.1 Ionの兄弟Achaeus
BC1435年、Ionの兄弟Achaeusは、かつて、父Xuthusが追放されたThessaly地方へ帰還した。[20]
BC1420年、Achaeusは、Thessaly地方から元の定住地へ戻った。[21]
BC1408年、Achaeusの2人の息子たち、ArchanderとArchitelesは、Argosの町からDanausの娘たちを娶り、その後、Argosの町へ移住した。[22]
Aegialeaの町とHyperesiaの町の間のXuthusの定住地には、Achaeusが残った。
3.2 Eumolpusとの戦い
BC1415年、Eumolpus率いる大集団がAttica地方に侵入して来た。[23]
Atheniansは、Cadmusと共に移住してきたGephyraeans (Phoeniciansの支族)が居住するBoeotia地方東部のTanagra近くへ避難した。[24]
第5代Athens王Pandionは姉妹Creusaの息子Ionに協力を求め、IonはAtheniansから推挙されてPolemarchとなってEumolpusと戦って休戦に持ち込んだ。[25]
3.3 Atticaへの移住
IonはAttica地方の東部沿海地方のPotamiの町に住み、Atheniansの政治にも関与した。Ionは、住民を4つに分けて部族名に自分の4人の息子たちの名を付けた。また職業によっても4つに分け、農民、職人、神職、衛兵とした。[26]
Ionは、Aegialus地方へ帰ることなく、Attica地方で死去し、Potamiの町に埋葬された。[27]
4 AchaiaのIonians
4.1 Ionの後裔
Ionには4人の息子たち、Geleon、Aegicores、Argades、Hoplesがいた。[28]
Atheniansは、Ionの4人の息子たちに因んだ、4つの部族に分けられ、その部族名は、BC6世紀に変更されるまで900年間使用された。[29]
また、Ionには娘Buraがいて、Heliceの町の少し東に彼女の名前が付けられたBuraの町があった。[30]
4.2 Aegialusに残ったIonの後裔
Ionには、Attica地方に住んだ4人の息子たちの他にも息子たちがいて、Aegialus地方の領地を継承したと思われる。
その息子たちの領地は、つぎの土地であったと思われる。
1) Xuthusが定住し、彼の息子Achaeusが継承した、Sicyonの町の西側の土地。(後のAchaia地方の最も東端の土地)
2) IonがSelinusから継承したHyperesiaの町。
3) Ionが創建したHeliceの町。
4.3 AchaiaのIoniansの血統
Ionの名前に因んで、Aegialus地方の住人は、Aegialiansという名前からIoniansという名前で呼ばれるようになった。[31]
しかし、もしIonという英雄が登場せずに、Ioniansという名前が付いていなければ、Lelegians (or Leleges)と呼ばれていたと思われる。
つまり、Ioniansは、Inachusの後裔の支配下にあったAegialiansと、Ogygusの後裔であるHellenの子Xuthusの支配下にあった人々との混血した種族であった。
4.4 Lesbosへの移住
BC1389年、Ioniansの一部は、Olenusの町のHippotesの子Aeolusの子Macareus率いる移民団に参加して、Pelasgia (後のLesbos)島へ移住した。Macareusの移民団には、Ioniansの他に、AeolisやPelasgiansも参加していた。[32]
4.5 Athensへの移住
BC1104年、HeracleidaeにSpartaの町を明け渡したOrestesの子Tisamenusは、Peloponnesus半島北部へAchaeansを率いて移住した。Tisamenusは、先住していたIoniansに対して、共住を申し出るが、彼らに拒否されて戦いになった。Tisamenusは戦死するが、Ioniansは追い詰められて、Heliceの町で包囲された。[33]
BC1102年、IoniansはAchaeansと休戦条約を結んで、Athensの町へ亡命した。Athensの王MelanthusはIoniansを受け入れ、共住させた。Melanthusは、同族への好意というよりも、Doriansに対する戦力として受け入れた。[34]
5 AtticaとMegaraのIonians
5.1 AtticaからAeginaへの移住
BC1415年のEumolpusの侵入時、Attica地方北東部のTetrapolisの一つ、Oenoeの町の住人は、Epidaurusの町の対岸のSaronic Gulfに浮かぶ島へ移住した。[35]
BC1420年に発生したAegean Seaの大津波によって、その島も被害を受けて、住人が少なくなっていたと思われ、島は、Oenoe (後のAegina)と呼ばれるようになった。[36]
Oenoeの町の住人は、Hellenの子Xuthusに率いられて、Thessaly地方から移住した人々であった。[37]
5.1.1 AeginaからEpidaurusへの移住
BC1285年、Actorの子Aeacusは、Thessaly地方のPhthiaの町からOenoe島へ移住し、島はAegina島と呼ばれるようになった。[38]
Aegina島に先住していたIoniansは、Xuthusの子Ionの後裔に率いられて、Epidaurusの町へ移住した。[39]
Straboは、Heracleidaeと共に遠征したIoniansがEpidaurusの町のCariansと共住したと述べているが、この時の出来事と思われる。[40]
5.2 AtticaからEpidaurusへの移住
Heracleidaeの遠征には、Attica地方のTetrapolisのIoniansも参加し、帰還が成功した後で、Argolis地方のEpidaurusの町に定住した。[41]
BC1102年、それまでEpidaurusの町を領していた、Xuthusの子Ionの後裔Pityreusは、住人を率いてAthensの町へ移住した。[42]
BC1095年、Pityreusの子Proclesは、元のEpidaurusの町の住人の大半を率いて、Athensの町からSamos島へ移住した。[43]
5.3 MegaraからAtticaへの移住
BC1074年、Athensの町の人口増加に危機感を募らせたDoriansは、Melanthusが奪われた旧領を彼の息子Codrusが奪い返そうとする前にAthensの町に攻め込んだ。[44]
しかし、Doriansは攻略に失敗して帰る途中、当時、Athens領であったMegara地方からIoniansを追い出して、Megaraの町を建設した。[45]
Megara地方を追われたIoniansの一部は、Attica地方の東海岸のBrauronの町へ住み着いた。Brauronの町には、Megaraの町に墓があるAgamemnonの娘Iphigeniaに関係のあるArtemis神像があった。[46]
5.4 AtticaからEuboeaへの移住
多くの移住者を受け入れて人口が増え過ぎたAttica地方の町は、Euboea島へ移民団を送った。
BC1085年、Xuthusの3人の息子たち、Cothus、Aeclus、Ellopsは、それぞれ、Chalcis、Eretria、Ellopiaという町を創建した。Ellopsは、さらに、周辺のHistiaeaなどの町も攻略した。[47]
5.4.1 EuboeaからChiosへの移住
BC1075年、Xuthusの子Ellopsの兄弟と思われるAmphiclusは、当時すでにEuboea島からAbantesが入植していたChios島へ移民団を率いた。[48]
Xuthusは、人種的にはPhoenicianであり、先祖は、Cadmusと共にBoeotia地方へ移住して来て、Tanagraの町周辺に居住していたGephyraeanであった。
Pausaniasは、Amphiclusの後裔HectorがIonian Leagueへ加盟できたことを不思議に思っていたが、Amphiclusと共にChios島へ移住したのは、Ioniansであったからであった。[49]
おわり
