スズキGSX1100S刀


 弟がドカティ748Rを買った。ちょっと跨らしてもらった途端に、十数年ぶりに自分のバイクが欲しくなった。そして、思い切って市内のバイク店に向かった。そこで目に止まったバイクはカワサキのZRX1100。走行距離6千キロほどの程度のよい中古車だった。ところが、購入するかしまいか、一晩考えてから翌日その店に行ってみると、売約済みの札が・・・。
 仕方ないので、他の店に行った。果たしてその店には大学生の頃に憧れていたカタナのイレブンがあった。国内仕様のSRであるが、走行距離はまだ約4千キロで、新車の輝きが残っていた。しかもヨシムラのカーボンサイレンサータイプのサイクロンマフラーが付いている。そのバイク見たとたん、私の気持ちはZRXからカタナへ・・・。 即購入契約を交わした。数日後の納車の日、ヘルメットとグローブを持ってワクワクした気持ちでバイクを引き取りに行った。
 しかし、現実は甘くはなかった。デカくて重たく、曲がらない車体、そして何よりも効かない前ブレーキとヨレヨレの頼りないフロントフォーク。はっきり言って乗って30分後にはカタナを買ったことをとても後悔した。基本設計が20年以上前のバイクを買った自分がマヌケだと思った。納車から半月後、弟と共に東北一周ツーリングに出かけたが、常用回転域での振動の多さに手がしびれた。鳥海山や蔵王、八幡平などの山岳道路では、「曲がらない」「止まらない」「加速しない」の3拍子で、とても恐ろしい思いをした。結局、ノーマル状態のカタナからは”苦痛”以外の何ものも感じることができなかった。
 そして・・・。ツーリングから戻って10日も経たないうちに、自宅には前後18インチのホイールと大径ブレーキディスク、4POTのブレーキキャリパーが届いていた。ここから、私のカタナ造りが始まった。刀カスタムの先駆者である秋田のチロさんからアドバイスをもらいながら、ほとんどの作業をDIYで行った。幸いカミさんの実家が元自動車修理工場で、必要な工具はほぼ揃っており、パーツさえ手に入れれば、いつでも改造に着手できる環境にあった。
 こうして、当HP管理人のカタナ造りが始まった。改造の目標は、中年らしく80年代風の外観になるように硬派に仕上げ、かつツーリングに出かけても快適で、トラブルなく使える”普通”のバイクに造り換えることだったのだが・・・・・?
  


刀の改造過程
 改造の第1段階。前年にすでに前後18インチのマルケジーニ・ホイールとアドバンテージの320パイ・ブレーキキットを入れていた。この年初めにヨシムラの限定UPマフラーが手に入ったことをきっかけに、ステップフレームを切断し、ヨシムラの前後サスペンションとステップキットを入れたことにより、一挙にカスタムバイクらしくなった。見えないところでは、点火方式を逆車と同じくアナログ式とした。当初はこれで終わらせるはずだったのだが・・・。


 改造の第2段階。同じ年の夏にOVERレーシング製のスタビライザー付きのスイングアームを入れたことにより、さらに見た目のカスタム度がアップした。当時は、あえて薄汚れたバックスキン調のシートを入れて、SZ風にしていた。





 改造の第3段階。この年の春にホースサイド廻しのオイルクーラーを入れたことに始まり、溶接によるフレーム補強やキャブのフルパワー化を図った。この時点でのシートはヨーロッパ輸出仕様SDのものだ。





 改造の第4段階。タイヤをそれまでのバイアスからラジアルにするとともに、とうとうレーシングキャブを入れてしまった。選んだキャブはもちろんヨシムラのTMR−MJN。その結果、今までにない暴力的な加速感を味わえるようになった。
 その後、リアディスクを他車種のパーツに交換し、目標としていたカタナの改造をほぼ完了させた。完成度は自分的に98%。残すところは、フレームとエンジンの塗装、そして乗り手の腕かな?



 さらに改造は進み、第5段階へ。この冬、19年ぶりに2メートル近い積雪を記録し、例年よりも大幅にシーズンインが遅れた。3月になってもバイクに乗れないという欲求不満を解消するために、車庫の中で前後足まわりを今流行の17インチに組み換えてしまった。前後17インチ仕様は、今までの18インチ仕様に比べて、さらにカタナ本来のニュートラルな操安性を失い、カタナらしさを失ってしまうことを覚悟の上で改造(改悪)した。しかし、試乗の結果は予想に反して18インチとはさほど変わらない乗り味で、安定感は18インチ仕様よりも増すことになった。

 改造の第6段階(多分、最終段階)フル補強を施したフレームへの換装と同時に、エンジンの塗装を行ってしまった。おまけに今流行のスカチューン?もしてみた。
 ヨシムラのマフラーが付いていただけのほぼフルノーマルの中古のカタナを遂にはこんな姿にしてしまうなど、自分でも思ってもいなかった。これ以上の改造はエンジン内部に手を付けるか、油冷エンジンへの換装しかない。これでやっと4年越しのカタナの改造から解放される!・・・かな?


 2007年仕様。外観上の変更点は、ヨシムラのボンネビル用フロントフェンダーを取り付け、見た目をヨシムラNK-1レーサー風にしたことだ。これ以上、今後外観を大きく変更することはないと思う。