電脳写真散歩タイトル
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「見なさい、これを見なさい」といいたげに…

青い海公園の春。まだ潮風は冷たく人の姿もまばらです。ただうみねこがミァ、ミァと鳴き交わし、桟橋の下のテトラポットに打ちつける微かな音が時折聞こえるだけ。それでもねぶた小屋の設営がもう始まっていて、ほんの少しうきうきとした陽春の断片を感じることができます。

合唱界のメガヒットである高田三郎の名作合唱組曲「水のいのち」の第四章「海」。
高野喜久雄の詩によるこの章は「満ち足りた死を そっと岸辺に打ち上げる 見なさい これを見なさい といいたげに」としめくくられます。そして静かに打ち寄せられる波の音のピアノ伴奏とともに歌われる「見なさい これを見なさい」のリフレインがひたひたと心を打ちます。五章からなる「水のいのち」、どの章の完成度も並外れて高いと思っているのですが、ことにこの「海」の最後の部分はたまりません。
海辺に立って潮の香りを嗅ぐ時、頭の中にその音楽が流れだし、寄せて返す波の音を聞いてその詩を思い出します。
そうしてこれまでの自らの人生を思うと同時に、これからどう生きていくべきかを改めて考えるのでした。

 

2005年4月18日撮影

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