岩木川原の浅い春
「春まだ浅く…」と季節の形容で「浅い」と表されるのは春だけ、反対に秋は「深い」というのがおもしろいですね。
とりわけ私たち雪国人は、花咲く陽気の爛漫の春よりも冬が過ぎ去ったばかりの浅い春の頃が好きなのではないでしょうか。
あちらこちらに残雪の山はまだまだ高く、こんなに晴れているのに顔にあたる風はまだまだ冷たい。でもついこの間まで濃くにおっていた雪の降る独特のにおいはもうすっかり感じられません。このホッとする気持ち、確実に春が来たと感じる幸せな気持ちは、四ヶ月余りの時には天を恨みたくなる気にさえなる厳しい雪の季節を耐えてきたわれわれ雪国人でなければわからないことのひとつだと思います。
この季節、昔は「雪切り」という作業がありました。各家で踏み固められた氷のようになった雪を切り出して積み重ね早く解けるようにしたものです。公的機関の除雪がある今は「雪切り」こそしませんが、待ちに待った春を心から迎えるために家の前の残雪をつき崩す光景は暖かいものです。
岩木山の雪に覆われた感じも、いつもの年よりも格段にびっしりとしています。
でもこのうす水色の空のなんときれいなことでしょう。
「さあ、やるぞ」と、別に何をというわけではありませんが
思わずつぶやきました。