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「シェーン」カムバック!

小学生の頃あまり洋画には連れていってもらえなかったので、ジョン・ウエィンやゲィリー・クーパーの西部劇映画は観ていないかわり、テレビの西部劇ドラマは好きだった。「ローン・レンジャー」「幌馬車隊」「ボナンザ」など週に一回その時間をとても楽しみにしていたものだ。西部劇史上屈指の名作「シェーン」も公開時は観ていない。リバイバル上映で観たのが確かコテコテアクションのマカロニ・ウエスタンにけっこうハマっていた時期で、この正統派ウエスタンの素晴らしさにあらためて脱帽したのであった。
主人公「シェーン」を演じるアラン・ラッド、一見やさ男だしその衣裳もよくある鹿皮のヒラヒラのついたやつでちょっとダサイが、ハリウッドいちの早撃ちといわれた華麗なガンプレイとの落差がむしろ魅力的だし、はんぱじゃない拳銃の発射音のデカさと黒づくめの衣裳を着た敵役の殺し屋(ジャック・パランス)の怖さとかっこよさが強烈な印象を残す。
そのへんのドンパチアクションの筋立てはとてもよくできていてそれも十分楽しめるが、気に入っているのはそれだけではない。
寄宿先の人妻(ジーン・アーサー)とシェーンとの間にかすかにわきおこる微妙な感情。それは恋ともいえず、無論愛だとか不倫などといえるものではない。ほんとうにおぼろげな心のふれあいの切なさがとてもきれいに描かれていると思うのだ。名作と呼ばれる西部劇は数多いしハリウッド映画だから西部劇であろうと男女の物語も当然挿まってくる。しかしこんなにはかない心の揺れを素敵に描いているものは他に無いのでは、と思っている。
そしてそれがあるからこそ、名曲「遥かなる山の呼び声」がバックに流れる中、ジョイ少年の「シェーン!カムバ〜〜ック!」の叫びがワイオミングの荒野にこだまするあまりにも有名なラストシーンが、観るものの胸に一層哀しく響くのだ。

西部劇のキング、ジョン・ウェインが末期癌の老ガンマンを演じた彼の遺作「ラスト・シューティスト」、ジョン・ウェイン自身が癌で世を去るということもあって、好みのウエスタンもう一本である。この作品もまたローレン・バコール演じる未亡人との老いらくの恋が素敵だ。

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