サルバンドプル保育園の概要   home

サルバナンドプル保育園は、西ベンガル州の州都コルカタ(旧カルカッタ) から列車で約2時間くらい、北西の方向にあるビルブム県にあります。インドに詳しい方には、ビルブム県というよりシャンティニケタンと言った方が分かりや すいかもしれません。インド(バングラデシュの方はバングラデシュ出身と主張するのですが・・・)初のノーベル文学賞に輝いた詩人タゴールゆかりの町で す。この町は、昔から日本ともなじみが深く、岡倉天心が学んだシャンティニケタン大学があり、今でも毎年日本人留学生がいます。サルバナンドプル保育園 は、シャンティニケタン郊外にあるサンタル人の集落にあり、ここへ来る子ども達もほとんどはサンタル人です。

 この保育園はインド人の実業家の遺志による基金で、数年前に開設 されました。それが、最近、実業家が、支援を打ち切ってきました。その大きな理由は、サービスセンターの教育方針と実業家の方針が相容れなかったためで す。実業家の方針は、簡単に言うとサンタル人の「ベンガル人化」です。 サンタル人は少数民族ですが、サンタル人としての歴史、文化、伝統をもち、民族としてのアイデンティティを失わせるような教育は誤りです。そのような、植 民地主義的な方針は受け入れられるものではありません。この点で、決裂しました。また、2歳から5歳の子ども達が通う保育園なのに、読み書きを丸暗記で教 えこむいわゆる旧態依然とした教育法を展開するように、要請され、この点でも私達の考える教育法と大きな隔たりがありました。最終的に、実業家は、支援を 引き上げ、以来、保育園の先生たちの給与をサービスセンターが支払ってきました。そろそろ、それが、センターにとって経済的な重荷になりつつあります。

 サルバナンドプル保育園の園長先生は、ハイスクール卒業資格を持 ち(高校全入の日本とは異なり、簡単そうですが、インドでは結構難しい)、教授法もしっかり身につけています。ラニ先生のおおらかな笑顔とルビ先生の思慮 深さと3人が素晴らしいチームを作り上げて、教育に励んでいます。保育園は、建物も修築され、設備も揃いつつあり、とても充実してきました。3つの保育園の中では、一番整っていると思います。園にある畑の脇 にポンプがあり、水が確保されています。その野菜畑では、野菜が青々と育ち、子ども達のお昼ご飯になっています。運動場はゲーム用に整備され、走り幅跳び ができる砂場も作られています。また、日射病や熱射病の不安を回避できる屋根のある遊び場もあります。サービスセンターと村人が一緒になり、みんなで、作 り上げて来たのです。村の人たちは、理解があり、とても協力的で、これからの安定した運営、発展が期待されるところでした。今回の支援の引き上げは、保育 園の存続に関わる大きな問題です。何とかしたいという思いで帰国しました。

=「第1次サルバナンドプル・プロジェクト」=

 そこで、2004年の4月から5年計画で、「第1次サルバナンド プル・プロジェクト」が始まりました。先生たちの給与の総額は、月額で2,600ルピー、1年分で33,800ルピー(手当ても含んで)です。これを1ルピー=2.6円として計算すると、1年で87,880円、約10万円、5年分で50万 円です。何とかなるだろうとともかく走り出し、皆さんのご協力で、第1次サルバナンダプル・プロジェクトは2009年3月に無事終了しました。

=「第 2次サルバナンドプル・プロジェクト」=

 もう少し支援して欲しいと言う要請があり、引き続き「第2次サルバ ナンドプル・プロジェクト」が始まりました。2009年4月から2013年3月までのプロジェクトです。サルバナンダプル保育園の先生たち3人は、とても 良いチームワークで教育活動に専念し、家庭の理解と支援を得、順調に運営されてきました。

 ここはもともと病院であったのが使わなくなり、壊れ果てていた建物 を利用してつくった保育園ですので、施設・設備は整っていませんでした。そこで、(財)青森県国際交流協会から5年間、補助を受け、シーソー、ブランコ、 すべり台などの遊具を充実させ、またポンプを設置して子どもたちがすぐ水を得ることができるようにしました。

 ということで、交通の便の良さもあり(特急でわずか2時間半)、ど ちらかというとマドハブールよりもこちらの方を訪問することが圧倒的に多いです。ボルプル市には、本屋さんも数軒あり、またアジア料理のレストラン(私達 はここを「学生街の食堂」と呼んでいます)があるので、何かさっぱりしたものを食べたいねというときにはここへ行きます。お勧めは、野菜スープで、実沢山 の塩味のスープで実に美味しいです。なじみの味を食するとほっとします。シャンティニケタンに留学している日本人、韓国人、台湾の人、それに欧米系の人な どがいて、やはり皆変化を求めてここに来るのかなと思います。ちなみに、ここのご主人は日本人の家庭ではたらいていたことがあるようで、日本語での会話が 可能です。このことも日本人が集まる理由でしょう。

= 新 たな展開 =

そして、「第2次サルバナンドプル・プロジェクト」が始まった直 後、このサルバナンダプル保育園は、新たな局面を迎えました。これまでは、サービスセンターが運営をし、経済的な支援をABAが行ってきました。ところ が、このサルバナンダプル保育園が、政府の推進するICDSというスキームに統合されることになりました。簡単に言うと、政府直轄の保育園になったので す。政府派遣の先生たちが2名来るようになりました。

となると、サルバナンダプル保育園の3名の先生たちが、余ってしま います。そこで、この3名の先生たちを指導主事のような形で、近隣のICDSセンターへ、教師の教師として派遣しようということになりました。まだ、この プロジェクトは始動していません。いつかは始まるのでしょう。

ということで、とりあえずABAのサルバナンダプル保育園への支援 は、区切りがつきました。今後は、また、今後で、状況に合わせて何ができるかを考えていこうと思っています。

これまで、支援してくださった皆様に心からの感謝を申し上げます。

*ICDS(Integrated Child Development Scheme)就学前の子どもや妊娠中及び授乳中の母親達に、毎日食事を提供するというものです。食事にきた子どもたちに何らかの教育活動をも合わせて行 うというものです。母親達には、保健衛生教室、栄養教室、家庭菜園指導なども行っているところがあります。

ボルプル市は、ノーベル文学賞に輝いたタゴールの活動した大学のあ る街です。自転車に乗った学生が行き来し、文化の香を感じる街です。昔、岡倉遠心もここで学びました。ここには、日本を学ぶ「日本学院」があります。学生 達は、日本語を学んでいるために、日本人を見つけると日本語会話の勉強のつもりでしょう、気軽に話しかけてきます。青年海外協力隊の日本語教師も派遣され ています。気の良い若者たちです。